琴奨菊の優勝と内助の功

琴奨菊が、日本人力士としては10年ぶりに優勝した。過去5回もカド番を経験しているため、最初は誰も優勝するとは夢にも思っていなかっただろう。
それが、取り組みが進むにつれ、優勝候補の一角に数えられていた稀勢の里が敗退し、鶴竜が負け、今場所もまた、日馬富士白鵬のいずれかが優勝するだろうと諦めムードが漂っていた。
ところが、ダークホースであった琴奨菊が連勝を続けると、ひょっとして優勝かもと注目が集まり始め、その後、3横綱を破ると、今度こそ優勝か期待に変わったが、13日目に同期の豊ノ島に敗れた時は、白鵬との優勝決定戦かと覚悟したが、得意のがぶり寄りで連勝してついに賜杯を掴んだ。
10年ぶりの優勝に、地元柳川だけでなく、日本中が歓喜したのは当然のこととして、それ以上に注目が集まったのが、祐未夫人の内助の功であったろう。
与謝野鉄幹の「人を恋うる歌」には「妻をめとらば才長けて、見目麗しく情けある」と言う歌詞があるが、正に、これを地で行くような女性で、その才と献身ぶりは、今の日本にも、こんなに素晴らしい、日本女性の鑑のような女性がいたのかと、皆、驚いたのだ。
語学に堪能で相撲が大好きと、相撲取りにとっては理想的な女性で、琴奨菊が全幅の信頼を置いているのも理解できるし、優勝の大きな力となったことは間違いないであろう。
報道によると、半年前から、専門のトレーナーの指導を受けて筋肉を付け、体幹を鍛え、さらに、メンタルトレーニングを受け、祐未夫人がこれを全面的にバックアップしたそうだ。
そういえば、横綱千代の富士は、小さな体をカバーするため筋トレに励んで筋力を付け、あれだけの大記録を打ち立てたが、これからは、部屋の伝統的な稽古に加え、こうした専門のトレーナーによるトレーニングやメンタルトレーニングといった、科学的な手法を取り入れることが必要な時代なのであろう。